2020年08月10日

彼はそれが正義といった。(アバッキオ&ブチャラティ)

5部でも護衛チームはあんまり書かないンですが、ブチャラティとアバッキオの話をふと思いついたので書き留めておきたいと思います。

自分はもう正義という言葉と真っ直ぐ向き合う事などできない。
そんな風にどこか斜に構えてしまうアバッキオと、そんなアバッキオに対して敬意をもって接するブチャラティの話です。

CP概念よりコンビ概念。
ありがちな話かと思いますが、ンまぁどうぞ。





「青へ落ちる」

 アバッキオは青い空へと手を伸ばす。
 澄み切った空はいまにも落ちてきそうな程青く、心地よい風が吹いていた。

 蘇る記憶は、過去の自分、仲間たちの日常、何気ない会話そしてブチャラティとの日常だ。
 あれはレストランから戻ってきた後だったか。
 他愛もない会話をし、それが段々尽きた頃ブチャラティはふと感慨深げにこう零した。

「マフィアになるというのが『悪』であり、『不運』な事だとしたら、俺は不運が重なって『こうなった』と言えるだろう……」

 ブチャラティがマフィアの一員となった理由を、彼の口からは聞いた事などない。
 だが彼が血の繋がった家族を守るためまだ子供と呼ばれる頃から裏の世界で生きているという事は噂で聞いていた。

 もし、彼の家族がマフィアと関わりがなかったら……。
 あるいはブチャラティが自分が犠牲になってまで家族を守ろうとしなかったら、きっと彼は賢くカリスマもあり思いやりの強い人間だったから、もっと『善い』人間になっていたに違いない。

 そう思うアバッキオの肩に手を置くと、ブチャラティは僅かに笑って見せた。

「だが俺は、ここでアバッキオと出会えた事はむしろ『幸運』だと思っているんだ。お前がいてくれたから、俺は自分の思う『正しい選択』を続ける事が出来ていると。俺は、過去の自分が行ってきた事が自分の意志に反している事ではない。その事が一つの『誇り』であり、俺が自分を誇っていられるのはアバッキオ。お前という仲間がいてくれたからだ……」

 と、そこでブチャラティは座ったままのアバッキオと額を重ねる。

「……ありがとう、本当に感謝している」

 その言葉に、どれだけ救われただろうか。
 アバッキオは自分が『正義』から零れた人間なのを強く自覚していた。
 誤った選択をしているのに気付きながらその連鎖から抜け出せず、ズルズルと悪事を引きずっているうちに大切な命を奪ってしまったという事を。
 そんな自分が真っ直ぐに『正義』を語る資格などないと思っていたし、マフィアに身を落とした今となっては『正しく生きる』事すら出来ないと、どこかそう思っていたからだ。

 だがブチャラティは、彼の『正義』を成すために自分が必用だといってくれた。
 自分がいたおかげで彼は『信念』を崩さずに生きていけるのだと気付かせてくれたのだ。

 ……自分はもう、正義を成すのに不似合いな男だろう。
 だが、誰かの『正義』を成すための手助けは出来るはずだ。
 そして出来る事なら他の誰かではなく、ブチャラティのもつ正義や信念に寄り添っていたいと思う。

 それが自分の正義に背いてしまった男の出来る、せめてもの償い。あるいは慰めになるのだというのなら命を賭けても良い。
 そう思っていたから。

(せめて、ブチャラティ。おまえの正義と信念を、最後まで貫き通す事が出来るように……)

 アバッキオは祈り、静かに目を閉じる。
 空は相変わらず抜けるように青く、アバッキオの意識もその中へと落ちていった。
posted by 東吾 at 23:53| ジョジョ駄文