2020年07月31日

しんがりは私が勤めますなアルフレくんとムラさん。(ヤマアル)

今月は作品数が少ないですね!(挨拶)

いや、まぁそんな時もあるよね……。
という訳で、もそっとモリモリ話を書きたい気持ちを抱きつつ、リハビリも必用だろうと思いつつ、ヤマとアルです。

森の中で獣に追われたどうしよう!
ヤマムラさんに死んで欲しくないから私が残りますって言い出すアルフレートくん概念の話です。

アルフレくんの性格的には「使命を果たすまで死にたくない」と思いそうだけど……。
ヤマアル世界では「使命と同等にヤマムラの事を大事に思っている」といいな。みたいな俺の希望的観測が含まれています。

んだば、したっけ!




「月光翻りその背を照らす」


 仮初めの月が輝く永久の夜、その裾野に広がる森の中を、掲げた松明だけを頼りにヤマムラとアルフレートはひた走っていた。
 背後から獣の息づかいが迫ってくる。
 虫を狩る事を名目にヤマムラが禁域の森へと狩りへ趣くのはいつもの事であり、腕が鈍るのを嫌ったアルフレートがその手伝いを名乗り出るのもまたよくある事だ。
 だが禁域の森にて獣が群れをなしているのは完全に予想外の出来事であった。

 狩人といえども人間より遙かに強靭かつ巨大な肉体をもつ獣を相手にするのは容易な事ではない。
 一対一でならやりようはあるが、三体以上の獣を相手にするのは自殺行為である事を狩人たちは皆心得ていた。
 野犬のように群れる獣などの相手となれば尚更だ。

 故に戦うのを避け撤退するのを選んだのだが、元より禁域の森は手入れもされてない荒れた森であり殆どが獣道だ。
 深く森に入ればたちどころに方向感覚を失い、永遠の夜にあるため無心で逃げるうちすぐに道を見失っていた。

 もはや自分たちがどこにいるのか、何処からきて何処に行けば逃げおおせるのかすらわからない。
 だが背後からは変わらず獣たちの息づかいが聞こえてきた。

 このままでは共倒れだ。
 二人ともそれには気付いていただろう。松明の光も乏しくなり、森は益々深くなる。

「ヤマムラさん、先に行ってください」

 立ち止まったのはアルフレートだった。

「私が獣たちを引きつけますから、ヤマムラさんは先に……このまま二人で逃げていても埒があきません。それなら二手に分かれた方がまだ、生き残る可能性は高いでしょう」

 それはアルフレートが自らを犠牲にしてヤマムラを逃がそうとする決意の表れだった。
 実際アルフレートの言う通り、このまま逃げても逃げ切れる可能性は薄い。
 生き残るためにはどちらかが犠牲になるというのは合理的な判断だろう。

「バカを言うな。キミはやるべき事があるだろう? それに、死ぬのなら歳の順だ。しんがりは俺が勤める、キミが行け。俺が残る。それが道理だ」

 松明をアルフレートに向け、受け取るように促す。
 アルフレートはまだ若く、処刑隊としての使命に邁進する身だ。

 自分と違い、ここで斃れていい身ではない。

 ヤマムラは本心からそう思っていたからアルフレートこそ逃れるべきだとそう伝えたつもりだが。

「いやです」

 アルフレートは真っ直ぐにヤマムラを見据える。
 それは覚悟を決めた男の目であり、常に真っ直ぐ前だけを向いてるアルフレートの気持ちが決して揺るがない事を意味していた。

「私は、貴方に生きてほしい。だからここに残ります。貴方には、死んで欲しくない。それに、私は死にませんよ。悪運が強いですから」

 アルフレートは微かに笑って見せる。彼がそう言ったのなら、もう梃子でも動かないつもりなのだろう。
 獣の足音は間近に迫っていた。

「全く、仕方ないな」

 ヤマムラは松明を投げ捨て、得物に手をかける。
 土の上に落ちた松明は揺れながら微かに火を放っていた。

「何ですかヤマムラさん、灯りがなければ逃げるのが……」
「いや、キミが留まるなら俺も残ろう。二人で相手をすれば、あるいは……何とかなるかもしれないだろう」
「そんな! 何を言ってるんですか。私はあなたに……」
「俺も、キミに生きていてほしい。キミには生きて、キミの使命を全うして欲しいんだ。その為にはこの老骨の命、さして惜しくはないさ」

 ヤマムラはそう告げると、アルフレートの肩を抱き寄せ触れるだけのキスをする。

「ヤマムラさっ……あ、あの」
「さて、続きは生き残ったらしようか? ……久しぶりの修羅場になりそうだが、頼りにしてるからな」
「は、はい! ……ふふ、急に負ける気がしなくなりましたよ」

 二人は互い仕掛け武器を掲げ闇を見据える。
 仮初めの月光はその背中を静かに照らしていた。
posted by 東吾 at 20:29| ブラボ