2020年07月23日

雨に降られるのも悪くはない。(手芝)

恋人として平穏に付き合ってる世界線の手塚×芝浦駄文です。
この一行でさらっと関係性を説明出来るっていいですね。

恋人として平穏に付き合えていない世界線が強烈すぎるというのもありますね。
はい、ありますね。

今回は出先で雨に降られた芝浦淳ちゃん様を迎えにくる手塚くんの話です。

へいわなせかい!
いいな、へいわなせかい!





「同じ傘の下でキミを見ていた」


 芝浦淳がコンビニから出ようと思った時、外はぽつぽつと雨が降り始めていた。

「あちゃー……まいったな、傘とかもってきてないんだけど」

 芝浦はそう呟くとポケットに入れた携帯電話を弄る。
 使用人に電話をかければすぐ送迎車を出してくれるだろうし、何ならタクシーを呼んでもいい。そう思っていた矢先。

「やっぱりここにいたか……おい、芝浦」

 聞き慣れた声がしたので顔をあげれば、そこには手塚海之が立っている。
 その手には芝浦が以前手塚の家に置き忘れてそのままになっていた傘が握られていた。

「えっ、手塚? ……占いって俺が雨に降られて立ち往生するとか、そんな事も分かる訳?」

 驚いて思わずそう問えば、あまり感情を表に出さない手塚も少し笑って見せる。

「……それは占いではなく天気予報士だな。今日は午後から降ると言っていたが、お前は傘を忘れて出ただろう? そろそろ授業も終る頃で、いつもならこのコンビニに立ち寄る頃合いだろうと思って迎えに来た。それだけだ」

 そう言って手渡された傘を、芝浦は暫く見つめる。
 ここまで迎えに来てくれたが、暫くタクシーをまったほうが濡れずに帰れるだろう。
 それに、雨は今こそ小雨だがもしもっと大降りになったら服が濡れて着替えが必用になる。

(せっかくだけど、タクシーを呼ぼうか。それなら濡れなくて帰れるし)

 芝浦はそう言おうと思い顔をあげた時、手塚はこちらへ手を伸ばした。

「どうした? ……帰らないのか」

 手塚は滅多に感情を表に出す事はない。
 だがその手には確かに深い愛情が込められているのが芝浦にも充分すぎる程に伝わったから、彼は自然とその手を握り半ば強引に手塚の傘へと入っていた。

「なんだ……自分の傘があるだろう」
「へへ〜、もうちょっと降ってきたら使おっかな。それまで一緒の傘でもいいだろ、な、手塚」
「まったく、仕方ないな……もっと傍に来い。肩が濡れてる……」

 芝浦の肩を静かに抱き寄せる、その温もりを感じながら彼は改めて実感する。
 自分は電話一つでいくらでも便利に事を進める事が出来る。
 だが愛しい人とこうして肩を並べ濡れながら歩くという事がこんなにも「幸せ」だとは思わなかったし、この幸福な時間は決して金やコネでは買えないのだと。

 そう思うと、濡れて不自由な一つの傘に入るのもやけに楽しく思えるから。

「手塚……また迎えにきてくれよ。また一緒に帰ろうぜ、な」
「また傘を忘れるつもりか? ……まぁ考えておく」

 二人の距離は自然と近くなる。
 そんな中でも雨は相変わらず降り続いていた。
posted by 東吾 at 12:06| 龍騎とか