2020年07月11日

本来なら七夕は命日。(手芝)

七夕ネタは8月までやっていいかなって……。
いいながら、7月7日にこれはやらなければいけないネタなのでは。というネタを書きました。

ま、7月だからセーフだよね!

という訳で今回は手塚×芝浦で、二人とも七夕まで生き延びてるぞー。
そんな喜びをしみじみ、噛みしめる話です。

どうぞ。(どうぞとは)


「7月7日を過ぎて」

 手塚が家に帰ると、部屋の片隅に子供の背丈ほどはありそうな笹が飾られていた。

「なんだ、これは?」

 驚いた手塚がそう問えば、すでに合い鍵で家にいた芝浦は得意げに笑う。

「おかえり、手塚。これ、いかにも今の季節って感じでいいだろ〜? サークルで七夕やるって誰かがもってきた笹、捨てちゃうならもう少し飾っておきたいなーと思ってもらってきちゃったんだよね」

 こんな大きなモノを貰ってきてどうするんだとか、どうせ数日したら捨ててしまうのだろうとか思う事もあったが。

「はい、コレ! 手塚も願い事書くだろ? 短冊つくっておいたから好きなだけ願い事書けばいいと思うけど」

 笑顔でそう言いながらペンと短冊を差し出されるとそんな事はどうだってよくなっていた。
 どうにも芝浦の笑顔を見ていると細かい事などどうでも良くなり、幸せな気持ちに浸れるからだ。

(こういう感情が、恋というものなんだろうか……)

 嬉しいような、くすぐったいような、だがいつでも傍にいてほしい自分の思いに戸惑いながら短冊に願い事を綴る。
 願いは、自分の占いが正しく人を導けるように。悪い結果が出ても、それがその人の糧となるように。
 それと。

(これも書かないと芝浦が怒るだろうからな)

 ずっと二人でいられますように。
 文字にすると気恥ずかしいが、今は芝浦といる空気は何より安心する。
 それは紛れもなく事実だったから、手塚はこの時間を大切にしていたかった。

「なぁ、何て書いたんだ?」

 短冊をのぞき込もうとする芝浦を遮って笑うと、手塚は笹へ短冊をつるす。
 外は朝からずっと雨が降っており、今夜は星が見えそうにはなかった。

(本来の七夕は旧暦で行うもの……今の暦だと、どうしても梅雨時にあたるからな)

 そう思いながら、手塚はガラス越しに空を見る。
 そしてふと、7月7日という日を迎えた事に気付いた。

「そうか、七夕ということは、もう7日か……」
「そうだよ。あと2,3時間もすれば8日になっちゃうけどね。それがどうかした?」
「いや……」

 何故だかわからない。
 だが、自分が7月7日を「越えて」生きている事が何となくだが喜ばしい事のように思える。
 隣に芝浦がいるのなら喜びは尚更だった。

「今、この日をお前と祝えるのがとても……とても、尊い事のような気がした。それだけだ」

 手塚は芝浦の身体を抱き寄せると、その耳元でそっと呟く。

「ななななぁっ、何だよ手塚! 手塚ってさ、時々恥ずかしい事さらっと言うよな」
「いやだったか?」
「いや、嬉しい……嬉しいけどさ……」

 芝浦は顔を真っ赤にしながら、手塚の腕に絡みつく。
 そんな芝浦を横で見ながら、手塚はただ二人「生きて」「未来にいる」今の幸福を噛みしめていた。
posted by 東吾 at 23:51| 龍騎とか