2020年06月29日

あなたのための玩具でいい。(浅芝)

ちょっと寝てるつもりが3日寝込んでいましたどうも。
現世は荒れておるのぉ。(神視点で突然話すタイプの脳髄)

という訳で数日おくれで浅芝の話を完結させました。
これ3話で一つの話だと思ってくれればいいかもしれません。
よくないかもしれません。

道徳的にはよくないです。
イエーイ、道徳的によくない is 楽しい!

どうぞ。(俺だけ楽しんでます)




「キミの玩具」

 芝浦が気付いた時、身体には包帯が巻かれていた。
 彼を繋いでいる鎖はなく、毛布がわりに蛇革のジャケットがかけられている。
 普段浅倉が着ているそのジャケットからは、ほのかに煙草のにおいがした。

「浅倉……」

 全身に鈍い痛みを覚えつつ、芝浦は狭い室内を歩く。
 かろうじて歩けるといった状態の身体を引きずりながら室内を散策し、見つけたのは二つのものだった。

 一つは、鍵の開いたドア。
 外へ逃れる出口だろう。

 そしてもう一つは、粗末な椅子の上で眠る浅倉の姿だった。
 トレードマークの蛇革ジャケットは今芝浦が着ているからだろう、上半身は裸のまま、乏しくなったたき火の前にいる。

 今なら、逃げられる。
 脳裏に自由になった自分を思い描いたが、朦朧とする芝浦の意識はすぐにその自由な姿をかき消していた。

 そして暫くただぼんやりと出入り口と、眠る浅倉を見比べて、浅倉の身体にジャケットをかけてやる。
 その動きで、芝浦が目覚めた事に気付いたんだろう。浅倉は目をこすりながらその姿を見据えた。

「起きたのか、芝浦」
「ん……あぁ……」
「何だ、逃げなかったのか」

 目をしばたたかせながら、浅倉は億劫そうに言う。
 確かに逃げようと思えば逃げれる状態ではあったのだが。

「どうして……」
「あん?」
「どうして、今になって俺を逃がそうとかするわけ? ……こんな事して、アンタだってどうなるか位わかるでしょ?」

 監禁されてからずっと暴力の日々だった。
 今は辛うじて立っているが、それも痛みに耐えての事だ。
 これだけの事をしたのだから、きっと警察も動くだろう。自分は芝浦グループの一人息子で、きっと今でも捜索願が出ている立場なのだろうから……。

「何だ、お前は俺が警察に捕まるのを心配してンのか?」

 浅倉は白い歯を見せて笑う。
 牙のような犬歯が闇の中にやけに鈍く輝いて見えた。

「そんなんじゃないけど……」
「はっ……警察なんざ元より相手になんかして無ぇ……たたき伏せる。それだけだ。そんな事、お前が心配する事じゃないだろ?」

 なぁ、と笑って手を広げる。
 どこか冗談めかしたその姿に、芝浦は自然と寄り添っていた。

「……どうした、芝浦」
「俺は……」

 離れたくないと、思っていた。
 ここに居れば殴られ、蹴られ、いたぶられ、苦汁に満ちた顔にキスをされる。男としての尊厳を踏みにじられて笑う男がいるだけの生活なのはわかっていたのだが。

「俺は、あんたと離れたくない……アンタと一緒にいたい。一緒に……いたいんだ、浅倉。浅倉ぁ……」

 目から自然と涙が零れる。
 殴られてもいい。蹴られても、引っぱたかれても、それでも自分が呻き、喘ぐ姿を見て、愛してほしい。その姿を愛してくれるのなら、痛みなど。苦しみなど、なんて小さな事なのだろう……。

「……俺は」

 浅倉は芝浦の指先に触れ、ただ虚空に目を向ける。

「俺は、このままだとお前を殺す。……お前は殺したいほどよく鳴く玩具だからな……だから、手放す事にした。殺したい程愛おしいが、殺してしまうのは惜しいと思ったからだ。が……おまえはそれでも、俺の傍にいたいって言うのか?」

 虚空を向いてた浅倉の目が、芝浦の身体を捉える。
 これが最後の選択。最後のチャンスなのだろうと思ったが。

「あぁ、俺は。あんたの傍にいたい。あんたの好きな玩具でいい……」

 芝浦は崩れるように浅倉の胸へと縋り付く。
 浅倉はそんな芝浦の身体を支えるように抱くと、その頬に、唇に、首筋に、キスの雨を降らせた。
 彼の身体全ては自分のものだ。その所有印を押すかのように。
posted by 東吾 at 03:41| 龍騎とか