2020年06月18日

占い師の胸騒ぎ(手芝)

やけに胸騒ぎがして眠れない手塚の家に、オッサンに襲われて犯されそうになった芝浦が逃げ込んでくる。
そんな話ですが、内容はぴゅあっぴゅあなキスをする二人ですよ。

作品の説明が二行で終ってしまいました。
最近は龍騎熱がまたこじらせてこじらせてこじらせつづけて再発みたいになってるので、芝浦淳ちゃん様受けをバンバン書いていきたいですね、18年たっても変わらぬフェチズム。淳ちゃんはずっと受けなんです。

こじらーせてるー。
ウワァァーイ!

キスしてるよ! キスしてるからね!(何故か念を押している)




「胸騒ぎの夜」

 すでに夜半過ぎだった。
 その日手塚はただ何となく眠る気になれず、さりとて起きて何かをする気にもなれず、ただぼんやりとベッドに寝転んでいた。
 眠れないのは、やけに胸騒ぎがするからだ。
 占い師として、正しく運命を読み解く他に鋭い勘のようなものも身につけていた手塚は、時々この焦燥感にも似た胸騒ぎに襲われる事があったのだ。

 そして、それは大概悪い予感でもあった。
 それまでも大地震の前兆のような天災から、知人の事故のようなものまで様々な「悪い予感」が的中してきた。
 今日も何かあるのではないか。そう思うと気が気でなく、到底寝付く事など出来なかったのだ。

(こういう時に芝浦がいてくれればな……)

 手塚はベッドで横になり、芝浦の姿を思い出す。
 視線は自然と芝浦がおいていったゲーム機へと注がれていた。芝浦はゲームだったら何でも上手なのだが、とりわけ手塚と二人で遊べるゲームを好んでいた。
 対戦格闘ゲームも、FPSも、普段ゲームなどをやらない手塚にとって初めて遊ぶものだったが、隣に芝浦がいて、色々教えてもらいながら遊ぶのも楽しかったし、何より隣にいる芝浦が笑っている姿を見るのが嬉しいと思えたのだ。

(今日も芝浦がいてくれれば、ゲームでもやって気が紛れるんだろうが……)

 一人で遊べるゲームもあるが、一人で遊ぶ気分でもない。
 そうしてただ時計の音を聞いていると、ふと誰かがドアをノックするような音がしているのに気付いた。
 力なくドアを叩く音は、深夜だから遠慮しているのだろう。眠っていたのなら決して気付く事の出来ないような音だ。

 誰だろう。胸騒ぎを感じながら扉を開ければ、そこには芝浦淳の姿があった。

「あっ。あ……て、手塚。ごめ……ごめん、起こしちゃったか?」

 そう言う芝浦は、普段のラフな姿とは違いスーツのズボンにワイシャツといった出で立ちだった。
 芝浦はまだ大学生だが、頭が切れるため時々父親の会社を次ぐ修行という名目で社内のプレゼンに参加したりもする。また時々は社交界へ顔出しをするためスーツを着ている事は珍しくないのだが、その時の格好は奇妙に思えた。

 スーツの上着は着てないし、ワイシャツはひどくよれてボタンが飛んでいる有様だ。
 芝浦グループの御曹司という事で大事にされている一人息子のする格好だとは到底思えない。

「いや、大丈夫だ……部屋、上がるか?」
「う、うん。ゴメンな、手塚」

 芝浦は背後を振り返り、恐る恐る部屋へと入ってきた。
 その態度はいつもの生意気さはなく、しおらしささえ感じる。何かに怯えているようで、スーツでは不自由だろうと部屋着を貸してやれば、それに着替える時、僅かな物音にも驚いて振り返るといった有様だった。

 何かあったのだろう。

 そうは思うが、それを聞くのも野暮だと思い手塚は暖かなミルクを差し出す。
 すると芝浦は少し落ち着いてきたのか、ぽつり、ぽつりと語り出した。

「オヤジに頼まれて、プレゼンの資料つくってさ。プロジェクトも一応成功して、その打ち上げに呼ばれたんだ」
「酒を飲むつもりはなかったんだけど、向こうの上役のオッサンにやけに進められてさ。自分で立つのが辛くなってきて」
「オッサンが少し休んだ方がいいからって無理矢理つれていかれた部屋で横になってたら、急に……」

 そこで芝浦は身震いすると、大粒の涙をこぼし泣きはじめた。

「急にっ、俺の服脱がそうとしてッ……首とか胸とか舐められてさ! ……俺そういうのいやだって抵抗したら、『プロジェクトが潰れてもいいのか』とか言い出すし、訳わかんねぇって思ったけど、変な薬盛られてたみたいで、身体あんまり動かなくって。でも、このままだと絶対ヤられちまうって思って、ムチャクチャに暴れて、やっと、やっとここまで逃げて……」

 それから声を殺して泣きだした芝浦の身体を、手塚は黙って隣に座る。
 こういう時、何声をかけていいのかわからなかったから、せめて傍にいようと芝浦の身体を抱き寄せれば、芝浦はその胸にすがりついて鳴き出した。

「こわかっ……手塚っ。俺、怖かった、怖かった……」
「わかった、わかってる……大丈夫だ。もう……俺がいる。ここに、俺がいるから……な?」
「うん、うん……」

 子供のように頷いて顔をあげる芝浦の頬は赤くなり、いつもよりずっと幼く見える。
 いや、まだ大学生なのだから歳相応の顔なのだろう。その表情は普段見せてる生意気な笑顔と違い、儚く弱々しく、そして愛おしかったから。

「……芝浦」
「ん……手塚、何。なんだよ……」

 手塚は頬に添えた手で芝浦の顔を引き寄せると、自然と唇を重ねていた。
 頭の中で、たった今襲われ動揺している男相手に。いわば心の隙がある弱っている相手にキスをするなんて卑怯な行為だと分かっていた。だがその時の手塚は、ただ彼を慰めたくて。そして、今はそうする事が一番良いような気がしたから、つい唇を重ねてしまったのだ。
 一方の芝浦は少し驚いたように目を見開くが、すぐに静かに目を閉じて手塚の身体にしがみつくよう抱きついてくる。
 二人は暫く触れるだけのキスを繰り返した。

「……悪い、芝浦。お前が、傷ついているのに俺は……」

 キスを終え、冷静になった手塚は自分がどれだけ卑怯な事をしたのか改めて思い、恥ずかしさと申し訳なさでついそう口にする。だが芝浦ははにかんで笑うと、嬉しそうに手塚の頬を撫でた。

「大丈夫だって。俺、結構元気出たし……それに。正直さ、あのオッサンに身体弄られてる時、『手塚だったらこんなにいやだって思わなかったのに』って、俺考えてたんだ。手塚だったら……って……俺。はは、何だろ。ヘンだよなぁ……」

 芝浦は恥ずかしそうに俯くと、手塚の手を強く握りしめる。

「……少し、休むか」

 外はまだ暗いが、夜明けも近い。
 疲れているだろうと思い芝浦に錬るよう促せば。

「手塚も一緒に寝ようぜ。いいだろっ。それとも、怖い思いをした俺を一人にさせる非道な奴なのかなー?」

 いつものような軽口も出てくる。
 仕方なく同じベッドで添い寝をしてやれば、やはり疲れていたのだろう。すぐに寝息を立て始めた。

「おやすみ、淳」

 手塚はそう囁いて、彼の額へ口づけをする。
 そして自分より小柄な芝浦の身体を、強く抱きしめ目を閉じた。

 もう誰かに奪われたりしないように。そんな願いを込めて。
 胸騒ぎは、もう消えていた。
posted by 東吾 at 13:01| 龍騎とか