2020年05月28日

キスは思い出に残るように。(ヤマアル)

昨日の続きっぽい話ですが、まぁ昨日のを読まなくても大丈夫な感じです。

ちょっとこう「初心な、付き合って間もないヤマムラさんとアルフレートくん」を書きたくて……。
初々しい二人を書いてみたくて……書きました。

ヤマムラから告白されたけど、全然えっちな事をしない。
それどころかキスもされないのでやきもきする、今まで身体の関係から始まる事が多かったアルフレくんと、アルフレくんが大事すぎるヤマムラさんの話です。

ウイ₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾ウイ





「キミの思い出になるように」

 キミの恋人になりたいんだ。
 突然ヤマムラから告白され、すでに一週間の時が過ぎていた。

 これまでも一緒に狩りをしたり、休日に一緒に出かけたり、食事をしたり……。
 ヤマムラと行動する事は多く、デートのような事は頻繁にしてきたが、恋人になったらキスを交したり、夜にもなれば貪るようなセックスをするものだと思っていたのだが、ここ一週間でヤマムラとした事は普段と一緒の事ばかり。

 他愛も無い雑談をし、一緒に食事をして、同じ部屋で眠る。
 一度、これは以前と変わらないのではと不安になり 「一緒に寝ましょう」 と誘いをかけてみたが、「いいよ」と良い笑顔で言われた後にされたのは、暖かいミルクを飲まされてベッドまでつれていかれ、毛布をかけて枕元でヤーナムの外からもっていた寝物語を読むという「寝かしつけ」をされただけだ。

(恋人ってこういうものなのでしょうか……それとも、私がもっと積極的に押した方がいいのでしょうか……?)

 アルフレートはそれまで身体の関係になった相手は何人もいた。
 その中でアルフレートに愛の言葉を囁き、恋人のような存在になろうとするモノもいた。
 誰もが恋仲になったのなら、アルフレートの身体を抱き、貪るようなセックスを繰り返したものだが……。

(……私が今まで受けていた愛は、違っていたのでしょうか)

 少なくともヤマムラが与えてくれる愛情は、これまでと違っている。
 まだ一度だって抱かれてもいなければキスさえしたことないというのに、アルフレートはヤマムラに愛されているのを感じていたからだ。
 ヤマムラの言葉はいつでもアルフレートに向いている実感があったし、彼の態度は例えばあの「寝かしつけ」にしても、アルフレートの事を思っているのがよく伝わってくる。

 だが、それが故に身体を求められないどころかキスすらしない事に焦りと不安が募るのだった。
 どうして、それを求めないのだろうか。

 今までの自分が積み重ねてきた愛はやはり間違ったものだったのか。
 ヤマムラに何か思惑があるのだろうか……。

「アルフレート。アルフレートだよな?」

 知らずのうちに人気のない路地裏へ足を踏み入れていたのは、アルフレートがそんな事を考えていたからだろう。
 呼び止められ、振り返ればそこには以前見た事のある男が立っていた。

 過去の男、といえばいいのだろうか。
 だが別に恋人だったという訳ではなく、何とはなしに互いの身体が昂ぶった時性処理として抱かれていた、その程度の相手だ。名前すらよく覚えてないその男は、まるでアルフレートは自分の所有物であるといった顔をしていた。

「久しぶりだな」

 男は有り体の挨拶を皮切りに、聞いてもいない近状を語った後、端的に言うとアルフレートの身体を求めた。
 暫く恋人がいて性処理に困っていなかったが、その恋人と別れてからは身体を持て余し幾ばくかの金で娼婦などを抱いていたのだが、アルフレートを見つけて以前のようにタダでそれをする相手が欲しいとでも思ったのだろう。

「……私は、そういう事はもうしてませんよ」

 やんわりと断っても、男は諦めようとしなかった。
 宿にさえ連れ込めばなし崩し的に関係が持てるとでも思ったのだろう。強引にアルフレートの手を引き、安宿のある道へ向おうとする。

「止めて下さい、いい加減に……」

 その言葉を言い終わる前に、男は前のめりになってその場へ崩れ落ちた。
 蹲る男の向いにはヤマムラが千景の束をもち睨みをきかせている。
 男が振り返る瞬間、千景の束でみぞおちあたりに当て身を喰らわせたのだろう。

「ヤマムラさん……」

 何時からここに来ていたのだろう。話を聞かれていたのだろうか。
 あれこれと考えが巡るアルフレートの横に立つと、ヤマムラは強く彼の肩を抱き寄せた。

「悪いな、アルフレートは俺の大事な人だ。もうお前はお役御免って所だな」

 そして頬に手をやると、男に見せつけるように唇を重ねる。
 突然の事でアルフレートはびくりと身体を震わせる。それは二人が初めてするキスだったから尚更だ。

「く、くれてやるよそんな男ッ、畜生っ」

 ヤマムラの当て身がよほど聞いたのか、男は捨て台詞を吐くと早々にその場を立ち去る。
 あとにはキスを終えまだ唇に残る温もりの余韻に浸るアルフレートとヤマムラとが残された。

「あ、あのヤマムラさ……」
「すまん、アルフレート」

 何か言う前に突然謝ってくるから、アルフレートは困惑する。
 何に対して謝っているのか全く見当がつかないからだ。

「ど、どうしたんですかヤマムラさん。私、別に……何も……」
「いや……キミと、初めてのキスはもっと思い出に残るような……もっと大切にしたいと思っていたのに、こんな所でこんな風に奪ってしまって……その、申し訳ないと……」

 ヤマムラは唇を押さえ、今更になって恥ずかしさがこみ上げてきたように顔を赤くする。

 これまでキスもしなかったのは、大切にしたかったから。
 思い出に残るようなキスをしようと目論んでいたからなんて、何て「可愛い人」なんだろう。

「……何いってるんですか、ヤマムラさん」

 アルフレートは自然と笑顔になっていた。

「私のこと、助けてくれようと思ってしてくれたキスでしょう? ……大切にしてくれたから出来たキスじゃないですか。そんなの、忘れられ無いキスですよ……」
「そ、そうか……」
「それでも、思い出に残したいキスがロマンティックなキスの事なら……そうだ、今日は二人で夜空を見ましょう。そこで、思い出に残るキスのやり直しをしてください……私は、あなたともっとキスがしたいから……」

 アルフレートがそう次げ手を伸ばせば、ヤマムラは心得たようにその手を握りしめる。
 そうして二人は寄り添い、裏路地を抜け歩き出した。

 まだ見ぬ夜空に思いを馳せながら。
posted by 東吾 at 05:42| ブラボ