2020年05月27日

まだ告白されてない世界のヤマとアル。(ヤマアル)

まだ付き合ってないヤマとアルの初々しい感じ……。
何度も付き合ってない時空を書いてる気がするけど、初々しいヤマムラとアルフレートは何度でも描きたいから初々しいヤマとアルを書きます……ね!

今回はまだ付き合ってないヤマとアルに、突然しれっと告白するヤマムラさんの話です。

猫が出ます。
猫に餌をあげてます。
よろしくおねがいします。





「黄昏時の猫が見ている」

 夕食後に残った食事を野良猫に与えていたせいか、ヤマムラの泊る宿の回りではよく猫を見かけた。
 その中で今年産まれたばかりの子猫の兄弟がいて、最近よちよち歩きからやっとしっかり走れるようになり、二匹がじゃれあってもみ合って小さな毛玉を作っている様子が覗えた。

「可愛いもんだなぁ」

 ヤマムラは今日も残り物を片手に、じゃれあう猫たちを眺めている。
 親ネコらしき猫は子猫たちをじっと見守っていた。

「もう、ヤマムラさんがそんな風に餌をあげるから野良猫が集まって来て仕方がないって、宿の主人がぼやいてましたよ」

 アルフレートは呆れたそぶりを見せるが、集まってくる猫たちに対して「可愛い」と思える気持ちが芽生えていた。
 それまでアルフレートはヤーナムに住む猫の事など全く気にかけた事はなく、ただ視界に「いるだけ」の存在だったのだが、ヤマムラが毎日のように餌をやり「可愛い、可愛い」と撫でたり抱いたりするのを見ているうち、あの小さくて暖かい生き物が何とはなしに可愛いと思えるようになっていたのだ。

(これもヤマムラさんの影響なんでしょうね……)

 足下にすり寄ってきた縞模様の猫を撫でると、アルフレートも自分の食べ残しをくれてやる。
 猫はゴロゴロと喉を鳴らすと、チキンの骨を丁重に舐めはじめた。

 じゃれあっていた兄弟猫たちも、餌がきたのに気付いたのだろう。
 転がるように走ると、親ネコの傍で餌を食べ始めた。

「あぁ、兄弟猫は仲がいいな。こういうのを見ると、自分が小さかった頃を思い出すよ」

 ヤマムラは目を細めて笑う。

「兄弟がいたんですか?」
「あぁ、俺は兄弟が多くてね……親は畑仕事なんかをしていて、小さい兄弟の世話は専ら俺の仕事だったよ。背中にまだ小さい弟をヒモでおぶって、山菜なんかを採りにいったなぁ」

 妻と子供がいたのか、というのは聞かない。
 ヤマムラの年齢であればいた可能性の方が高いのだろうが、今この地にいるという事は喪ったか捨ててきたか、どちらにしても辛い思い出を蒸し返す事になるだろうし、何より過去の事とはいえヤマムラに愛された誰かがいた、という事実を知れば嫉妬せずにはいられない。
 アルフレートはそういう性分の男だった。

「アルフレート、キミは兄弟がいたのか?」

 急に話をふられ、アルフレートは一瞬過去の自分を思い返す。
 母一人、子一人。煙草と酒の臭いが絶えず、毎日別の男が出入りする汚らわしい箱……記憶の奥底に閉じ込めた風景を振り切って、アルフレートはぎこちなく笑っていた。

「いえ、私は一人です。兄弟はいません」

 あるいは、兄弟がいたら自分の抱いた暗く、重い気持ちも少しは軽くなったのだろうか。
 兄弟がいたとしたら少しは嘘と作り笑いで塗り固めた過去が変わっていたのだろうか……。

「……でも、もし兄弟がいたのだとしたら、ヤマムラさんみたいな兄が欲しかったですね」

 自然にそう口に出ていたのは、もっと早くにヤマムラと出会えていればという願いもあったからだろう。
 アルフレートの言葉にヤマムラは少し驚いたような顔をして、それから頭を掻いて困ったような素振りを見せた。

「うぅん……キミの兄さんか。悪くはない、けど……それだと困るな……」
「えっ、ダメなんですか? ……わ、私なにかご迷惑を……」
「そうじゃないよ、迷惑とかじゃなくて……うーん……俺は兄弟よりキミの恋人になりたいって思っているから、兄弟だと困るなぁって……」

 急な告白に、アルフレートは無言になってヤマムラの顔を見る。

「……ダメかな?」

 はにかんで笑うヤマムラを前に、じわじわと幸福がこみ上げて来る。

「あっ、あの。わ、私でよければ、喜んでっ」

 アルフレートはその言葉を言い終わる前に、夢中になってヤマムラの胸へと飛び込み抱きついていた。
 そうして二人、じゃれ合うように丸くなる姿を、仲のよい猫の兄弟が二匹並んで見て居るのだった。
posted by 東吾 at 17:08| ブラボ