2020年05月26日

ヘーンーに膝枕してもらうガースーの話。(ガスヘン)

ヘンリックに膝枕をしてもらうガスコインの話です。
以前Twitterに流れを書いた記憶があるけどもうその記憶もうっすら……以前見た! ってネタだったらごめんなぁ……。

獣にやられて、でも頑健なので死に損なったガスコインとそんなガスコインに実は甘いヘンリック。
そんな二人の話です。

そんな多すぎるな。
どうぞ。







「柔らかな膝」


 しまったと思った時、身体は宙に浮いていた。

 それはまだガスコインが獣狩りを初めて間もない頃である。
 一瞬の油断で獣からの重い一撃を食らい、その身体は宙に浮く。
 ガスコインは自身がかなりの巨躯であるのを自負していたから、よもや一撃で自分の身体を虚空に放り投げる程の力がある輩などいないと思っていたのだが、そこはヤーナムに住む規格外の獣たちだ。

 ガスコインの身体など赤子同然と言わんばかりに軽々と吹き飛ばすと、身体は大地に強かに打ち付けられた。

「クソ、何だこの……化け物がっ……」

 口は動くが、身体は思うように動かない。
 ガスコインは結局その場で力は尽き果て、眠るように意識を失っていた。


 もうおしまいなのだろうか。
 獣に蹂躙され、殺されてしまったのだろうか……。

 揺れる記憶の中目を覚ませば、頭はやけに柔らかく、暖かな肉体に包まれていた。
 生きている、というより夢を見ているような感覚が身体を包み込む。
 ここは天国だろうか……自分は死んで、天に召されたのだろうか……。

 曖昧な記憶の中、はっきりと聞き覚えのある声がした。

「気が付いたか、ガスコイン」

 ……ヘンリックの声だ。
 彼の声が聞こえるという事は、死に損なったに違いない。仮に死んでいたとしても、少なくともここは天国ではない。
 ヘンリックは決して天に召されるタイプの狩人ではなかったからだ。

「……俺は死に損なったみたいだな」
「生き延びた、といえ。俺がフォローに入ってやったからな……しかし驚いたぞ、お前みたいな巨体がゴムまりみたいに中に浮いたかと思うと、ぐったりして動かないんだからな」

 悪態をつくが、ヘンリックの身体は温かい。
 気を失った自分に膝を貸してくれているのだという事は、目がほとんど見えないガスコインもその肌の質感で解る。
 ヘンリックの肌が存外に柔らかく、そして温かい事も含めてだ。

「とんだ冷血漢だと思っていたが……ヘンリック、お前さんの膝は温かくて柔らかいんだな。もう少し、ここで休んでいてもいいか?」

 冗談のつもりではなかったのだが、ヘンリックには軽口に思えたのだろう。
 二度、三度、少し強めに叩かれると。

「そんな口聞けるなら大丈夫だな、さぁ。とっとと行くぞ」

 ヘンリックはゆらりと立ち上がり、ガスコインより先に歩き出した。

「待てよ。まだ傷が疼くんだ。あんまり急ぐなって……おい、ヘンリック」

 ガスコインは慌てて相棒の後を追う。
 それはヘンリックの相棒を務めていた時の、ほんの僅かな記憶。
 だが暖かく優しい記憶の一欠片だった。
posted by 東吾 at 03:18| ブラボ