2020年04月05日

アルフレくんの輝きを見落とした狩人の話。(アルフレくんが死んでいる)

たまにはオリジナル狩人とアルフレートくんの話を書きました。
といっても「オリジナル狩人」は性格も性別も曖昧でただアルフレートくんを見ていただけの人って感じですが。

アルフレートくんを見て、アルフレートくんが死ぬまで。
それをただただ見ていた誰かの話ですよ。

なおアルフレートくんは死んでいます。(死ぬので)



「輝いていたカレル」

 アルフレートはこの狂乱渦巻くヤーナムで初めて出会った「人間らしい人間」だった。

「情報を交換しませんか?」
 穏やかに浮かべる笑顔は優しく、語る言葉も柔らかで。
 二言目には「殺せ」「死ぬぞ」「獣が」そんな物騒な言葉しか言わないヤーナム連中とは違ったものを感じさせた。

 後にヤーナムにおいて「そのほうが異常」だとうっすら理解できてきても、それでも彼は「本当の真人間」であると。
 善性でありまた良識のある人物だと信じていたかったのは……。

 ……獣により、理性を失い妻を殺した男。
 ただ一人残され不安になり、助けを求めて外に出て豚に喰われた娘……。
 ……かつての相棒が獣に落ちたのを知り理性を失った古狩人。
 狂った狩人を殺し続ける事が慈悲だと信じる鴉羽……。
 ……故郷と呼べる場所を燃やされ、たった一人でその場を守ろうとする隻眼の男。

 それだけ多くの悲劇を目の当たりにして、自分も半ば狂い初めていたからだろう。
 だからせめてアルフレートの言葉だけは良識であり常識であると信じたい自分がどこかにいた。

「ローゲリウス師の言葉です」
 ただひたむきに師の言葉を信じる彼を、自分もまた信じたかった。
 ローゲリウス師は善人であり、彼はその善人の言葉に導かれているのだろうと。

「この街を清潔にしましょう」
 ヤーナムという街は確かに穢れていて、冒涜的だと思った。
 だからこそ清潔にする、その意味を正しく理解していないままアルフレートは「正しいことをしているんだ」と信じてしまった。

 カインハーストに向かうための招待状を探していると聞いた時も、きっとそれが正しい事なのだろう。
 ただそう思い、それを信じて彼に招待状を托した。

 カインハーストで「彼」に会った時。
 血を浴び、微塵となった肉をまだ踏みにじる彼を見てもそれを狂気と思わなかったのは、ただ信じたくなかったから。

 ヤーナムという街にまだ人間的な理性を保っている存在がいてほしいと。
 彼はその人間的な理性をもつ存在だと、ただ怨敵を屠った事で昂揚しているだけ。
 だから街に戻ればまた穏やかに笑ってくれるのだと、それを信じたかった。

 信じたかったのだが。

 すでに冷たくなった身体に触れて、呆然と膝を突く。
 あぁ、思えばこの街で狂気に溺れていなかった時点でアルフレートが「普通」などではなかったのだ。
 分かっていたはずなのに、どこか人間の理性、良識、善性を信じたくて自分がそれを見ていなかっただけなのだ。

 人間が、人間ではない力に抗えず皆狂ってしまうなんて認めたくなかったから。

 アルフレートの死に顔を見ようと身体に触れれば、はだけた胸元から「輝き」のカレルが浮ぶ。
 烙印のように残る輝きのカレルは蚯蚓腫れか痣のように見えて、とうとう最後まで彼のもつ「輝き」の真意にふれる事などできなかった。
posted by 東吾 at 10:32| ブラボ