2020年03月19日

刺しちゃうアルと刺されちゃうヤーマー(ヤマアルBL)

今月はヤマアルをあまり生産出来てない気がしてすまんな!
原稿は危険がピンチなのにゲームとかやってるからkonozamaよ! って顔してます。

とはいえヤマアルも書きたいのでヤマアルも……かくよ。
そんな訳で今回は「愛しすぎたヤマムラさんをうっかり刺しちゃうアルフレートくん」です。

思いあまって刺す男は好きですか?
おっと現実では犯罪だからやめような!



「次の自分に期待しよう」

 不意に背中が熱くなり、驚いて振り返ればそこには真っ青な顔をして断つアルフレートの姿があった。
 その手には刃先の長い、だが小ぶりのナイフが握られており刀身は血に濡れている。
 ヤマムラがそれを認識すると同時に、内側から熱い血が上ってくるような感覚が伝わった。

 呼吸が少しずつ苦しくなり、ヤマムラはその場へ倒れ伏す。
 安宿の床は激しく軋んだが元より毎日が喧騒の中にある安酒場つきの宿だ。
 二階で人が倒れた所で、きっと誰も気付かないだろう。

 アルフレートは倒れたヤマムラの横に膝を突くと、ごめんなさい。ごめんなさいと譫言のように呟いた。

「ごめんなさい、ヤマムラさん。ごめんなさい、ごめんなさい。だけど私はあなたが恐ろしいのです。あなたは私を暴いていく。私の中に存在しないと思っていた人間らしい部分を、どんどん光の下へと晒していくのです。私は処刑隊の一部ではなく、ただ一人の人間に変わっていってしまうようで……私はそれが、怖くて、怖くて……」

 そしてまた何度もごめんなさい。ごめんあさいとか細く呟くのだった。

 そんな小さなナイフではなく、普段の仕掛け武器を使えば一瞬で命を奪えただろうに。
 だがそうしなかったのは、ヤマムラがアルフレートの獲物ではなかったからだろう。
 ヤマムラが獣であれば、あるいは血族の一員であれば迷わずそうしていたのだろうか……。

 朦朧とする意識の中、絶え絶えになる呼吸の間でヤマムラは精一杯手を伸ばしアルフレートの頬へ触れる。アルフレートは血で濡れるのも気にせず、ヤマムラの方を見た。

「アルフレート、今度はどこに行きたい?」

 死を間近にした中、ヤマムラはそう告げた。

「何か食べたいものはあるか? したい事、行ってみたい事はあるか。あるのなら、聞かせてくれないか。全部覚えておくから……今は叶わなくても次は必ず一緒に行く。どんな場所でも、連れていってあげるから……」

 アルフレートは相変わらず青ざめた顔のまま、ボロボロと鳴き出し驚いたように言う。

「どうしてそんな事を聞くんですか? 私は今、あなたを殺そうとしている男ですよ。どうしてそんな私に、希望を見せてくれるんですか」

 どうして、どうして。
 ごめんなさいの次は譫言のように「どうして」を繰り返す。そんなアルフレートにヤマムラは至極当然といった笑顔を向けた。

「笑っている君が好きだから、それだけだよ。俺がしたいと思ったからそういってるんだ。だから、最後まで聞かせてくれ。普通にしたい事を、望んだ事を。今は叶える事ができなくても次ぎの『人生』では、必ず。必ず叶えて……」

 その言葉を言い切らぬうちに、ヤマムラの意識は途切れた。
 あとは無限に続く静寂の闇だけが彼を包み込んでいった。

 ……かに思えたのだが。
 目を覚ました時に、傷は丁重に治療されていた。輸血液を入れられたのだろう。アレは特殊な血だから、多少の怪我でも「心」さえ折れてなければ命を繋ぐ事が出来る。
 つまるところ、ヤマムラの心はまだ折れていなかった、という事だろう。まだ生きてしたい事があったのだ。そう、アルフレートとともに色々なことをしたい。それは「次」ではなく出来るだけ「今」叶えたい事だった。

 鈍い痛みと突っ張った感覚を覚えながらヤマムラが起き上がれば、アルフレートはすっかりしおれた様子で椅子へこしかけていた。大柄なアルフレートが小さく見える程に、萎れているように思える。彼はヤマムラが起きるのを見るなり何度も。

「ごめんなさい、ごめんなさいヤマムラさん」

 そう繰り返し謝った。
 そんな彼の頭を優しく撫でると。

「別に治療なんかしなくても、殺してくれてもよかったんだぞ」

 なんて、最初からそれさえ怖くなかったように言うヤマムラに、アルフレートも。

「どうしてでしょうね、本当に殺してしまうつもりだったんですけど」

 不思議そうに首を傾げる。

「人を殺すのを躊躇ったのは初めてです、けれども」
「けれども、多分私も思ってしまったんですよ……これからじゃなく、次ではなく、『今』のあなたともっと一緒にいたいって」
「……いいですか、私、あなたの事を殺してしまうかもしれないけれども……一緒にいていいですか?」

 アルフレートの問いに答えるかわりに、ヤマムラは彼の手を握りしめる。
 そして、静かに微笑んで見せた。

 次ではなく今の思い出を、もっともっと重ねるために。
posted by 東吾 at 22:00| ブラボ