2019年02月28日

笑顔に至るまでのアルヤマ。

一人で待ち合わせをしていると、アレコレ考えてしまうヤマムラ・サンと、そんな事どうだっていいというほど破壊力のある笑顔と愛情をぶちこんでくるアルフレートくんの話を書きました。

元々はこう……ぷいんさんの描くヤマムラ=サンに影響を受けてかいたSSです。
イメージと違ってたら……申し訳ない! スルーしてください。
ちな、ぷいんさんの描くヤマムラ=サンは格好良くて可愛くて最高ですよ!

ぷいんさんのイラストから産まれたので、自然とアルヤマになります。
これがシゼン・ノ・セツリ!
「愛しきものよ、笑ってくれ」


 時々、ふと不安になる事がある。
 それはヤーナムのような街の中、一人でいると一層大きくなるのだ。

 周囲には顔立ちの整った人々が無数にいる。
 自分より鼻も高く、背の高さこそ己(おれ)も同じくらいだろうが、手足の長さは随分違う。
 異国の人間は……いや、周囲からすると己の方が「異国の人間」であり「外国人」なのだが……己からすると体格も、言葉も、何もかもが違いすぎた。
 この国の人間たちと比べると、己は随分とのっぺりとした顔をしているだろう。

 垢抜けない黒髪に黒い目をして、肌は今でこそ日焼けで褐色に見えるが実際はやや黄色みがかっているか、青みがかって見える。

 ……ヤーナムでは「獣の病」のため俺のような肌をもつものも「バケモノ」のように扱われる事はなかった。

 だが、ここではない外では別だ。
 肌の色が違う、目の色が違う、言葉が違う、風習が違う……。
 そういった事で奇異の視線を向けられる事数多あり、また密かに「東洋の怪物(モンスター)」やら「異国の化け物(フリークス)」と陰口をたたかれる事も多かった。

 そんな己を、アルフレートは選んだのだ。

 金色の柔らかな髪に、すこしくすんだ翠の目。白い肌のまだ年若い青年だ。
 己よりも一回り以上年下で……親子ほど歳が離れていると言ってもいいだろう。
 (それでも、己のような「東洋人」はこちらでは随分と若く……子供っぽく見えるので、アルフレートとの年齢差はそれほど感じない、というのが連盟の長・ヴァルトールの意見ではあったが)

 ……だが己はそれが酷くアンバランスに思えるのだ。
 彼のように若く、逞しくそして美しい青年が、己のように死に近い老木を傍らにおくなど烏滸がましい事だと。

 そう思う反面、離れられないでいるのもまた事実であった。
 アルフレートはどこか危うく、己を失ったら暗い海に投げ出された小舟のようにゆらゆら揺れ、そのまま消えてしまうんじゃないか……泡沫となり誰もこの世界に「アルフレート」という存在があったことを忘れさせてしまうのではないか……そんな儚さ、危うさ、脆さがあった。

 同時にその身体は蠱惑的でもあった。
 この耳元で 「わかってますよね?」 ただそう一言囁かれるだけで、ずっと年上であるはずの己がつい頭を垂れてしまうのだ。
 その唇が、指先が、舌が……身体がくれる歓喜を知ってしまったが故に、離れるのを拒むのだ。

 老いらくの恋が燃え上がるほど情けないものはないと、故郷では言われたが……己はきっとなさけない男なのだろう。

 そんな、不安がわき上がるのだ。

 一人でいるとそう、考えてしまう……自分は相応しくないと、アルフレートにはもっと相応しい存在がいるはずだと。
 だが……。

 町中で周囲を見渡す、ひときわ背の高い青年に気付く。
 灰色の装束を自分の誇りとしてまとった、誰が見ても美しい青年だ。
 実際道行くものたちは、男でも女でも彼のその顔を確かめるよう振り返っていく程だから己のひいき目ではなく、アルフレートは美しいのだろう。

 そんなアルフレートの顔は、誰の顔を見てもどこか不安げだった。
 まるで世界には自分だけしかいないような、そんな孤独な影がある。

 だがその影は、ただ一瞬で潰えた。
 かと思えば顔いっぱいの笑顔になって、頬を赤らめて笑う……どうやら、己を見つけたらしい。
 その表情には、隠しようのないほどの愛情に満ちていたから、己はつい片手をあげその名を呼んでいた。

「ここだ、アルフレート。己はここにいる」

 言わなくても分かるだろうが、つい、そんな風に声をかける。
 これはアルフレートに気付いてもらうため、というのも勿論あったがそれ以上に己が、アルフレートの名を「呼びたい」と、そう思ったからだった。

 するとアルフレートは安心したように微笑むと、そのまま己の胸へと飛び込んでくる。

「探しましたよ、ヤマムラさん……ふふっ、会いたかった。会いたかった……会いたかった」
「あぁ、己もだ」

 その言葉を待ちわびたかのように、アルフレートは己と唇を重ねる。
 人前だったから、見せつけるような感じになっただろう。
 アルフレートは人目を引く美男子だから、驚いたような顔をする連中も多かったが……。

「おい、アルフレート……」
「いいでしょう? ……あなたは、私のものなんですから」

 そう語り笑うアルフレートに、自然と笑顔になっている。
 ……結局はそう、己はアルフレートが。その笑顔が、声が、吐息が……その全てが愛しかったのだ。
posted by 東吾 at 03:04| ブラボ