2019年02月22日

あなたを傷つけていいのは私だけ、なアルヤマ。

どこか狂気が加速してしまい止める事ができなくなってしまった。
そんなアルフレートくんの、やべー話です。
徹頭徹尾アルフレートくんがヤベー奴なので、ヤベーアルフレートくんが見たい人向けですがどうぞ。

まぁ基本的に全部俺向けなんですけどね。
この話はアルヤマ前提で書いてます。
アルフレートくんが執着強くなるのは何となくアルヤマの時かなって感じてるんですよね。

軽率に人がしにますが、まぁ、ヤーナムだし仕方ないよね!
ちなみに大体「彼」という第三者の視点で語られます。
「それは死にも値する」

 ヤーナムの街には、獣の病に対応する組織や狩人が多くいても日常の事件を解決するような組織はない。
 いや、実際に「ない」訳ではないのだが「自警団」と呼ばれる市民からなる日常の事件……それは空き巣や泥棒、引ったくり、強盗から殺人までの細かい捜査の殆どを3,5人からなる「自警団」と呼ばれる人間が、狩人たちよりずっと安い賃金で働かされているのが現実だった。

 確かに自警団は狩人たちのように命をかけている訳ではない。
 だがその捜査は時に危険も伴うのは狩人と一緒だ。
 それだというのに賃金に恵まれず、他の商売に比べて荒くれ者やゴロツキが多い事もあってヤーナムの「自警団」は殆ど機能していなかった。

 自警団に頼むくらいなら、暇な狩人にいくらか報酬を渡して調査してもらった方が事が早い。
 なんていうのは、ヤーナム市民なら誰もが知っている事だった。

 だが、それでも「自警団」としてヤーナムの平穏を守ろうとするモノもいる。
 彼はそんな自警団の一人であり、だからこそその「不信な死」に疑問を抱いた一人だった。

「なぁに、酔っ払いの喧嘩だろう」

 頭を強かにうち、顔を石で潰された死体を前に同僚が言う。
 死んだのは30代半ば程度の狩人だろう。
 装束から狩人なのは見てとれる。その服装から、ヤーナムの狩人ではない事もだ。
 どこか他の街でやっていけなくなり、このヤーナムに逃げ込んでくる犯罪者紛いの連中は多い。きっとそういう輩だというのは、肩に焼かれた「罪人」の焼き印からもわかる。

 このヤーナムで、暴力沙汰の死人はそれほど珍しくない。
 狩人たちは概ね血気盛んで口げんかから殴り合いに発展し、相手を殺してしまうという事もあったからだ。

 市民が殺された、となると一大事だ。
 医療教会の狩人が殺されたとなれば、これは自警団の出る幕ではない。医療教会がきっちりと「その罪」を暴く事だろう。

 だが流浪の狩人となると話は別だ。
 閉鎖的なヤーナムでは、余所者は嫌われる。余所者の狩人などといえば、殆ど野良犬同然の扱いをされるのが当然だった。

 ヘンリックやガスコインのようによほど腕がいいか。
 あるいは鴉羽のアイリーンのように狩人狩りを請け負うような特殊な狩人でなければ、ヤーナム市民は余所者を認めないだろう。
 (もっともこの血と蛮行が当然となったヤーナムに認められる事が名誉なのかどうかは、定かではないが)

 だからこそ、流浪の狩人。それも名もない狩人が死んでも気に留めるものはいなかった。
 ただ「彼」を除いては。

(頭を強かにうちつけて相手の顔すらわからない程にして【殺す】なんて、並大抵の事じゃない……それに俺は、このような【死体】を見た事ある……)

 最初に見たのは半年ほど前だろうか。
 それは人間ではなく、犬だった。
 普段から猟犬を従えている家から逃げて、そのまま野良犬となっていた犬が、頭を潰され丁寧に石まで落とされ殺されていたのだ。

 死体が汚いからどけておいてほしいと、そんな依頼で彼は出向いたのだが、あの時「たかが犬を殺すにしては随分と念入りだ」と思った記憶がある。

 その次ぎに見たのは2,3ヶ月前の、娼婦だった。
 血族の末裔で美貌は素晴らしいのだが、客を取るのが強引で腕をひいて無理矢理連れ込もうとしたり、己の思い通りにならないと罵倒や平手、引っ掻くなど暴力に訴えるというあまり質のいい娼婦ではなかった。

 彼女の死体もまた念入りに頭が潰されていた。
 市民の死であるが、彼女は血族の末裔でありヤーナムにとっては「毛嫌いされている存在」である上、娼婦としても三流であった事からこれもあまり気にかけるものはいなかった。

 そして、今日見つかったこの死体も同じような死体だ。
 明らかに同じ誰かの手合いである。
 それも、相手に対して強い強い憎悪を抱いている……。

 ……マトモな神経ではないだろう。
 最も「マトモな奴」などというのはこの街では逆に「おかしい奴」なのだろうが。

 かくして彼は、その事件の捜査を始めた。
 形式的にだが、過去の娼婦の事、そして野良犬殺しについても周囲に聞いて歩いた。

 あの狩人がごろつき同然だった事。
 殺された娼婦があちこちで男を引っ掻き、暴力沙汰をおこしていた事はよく耳に入った。
 野良犬に関してはやたら吼えてかみ癖がある事や、ベンチで飯を食ってる輩の飯を横取りする事があった話が少し出て来たくらいだった。

 共通点は、皆粗暴であった事くらいか。
 誰もが誰かしらとトラブルになるような輩だったので 「殺されても仕方ない」「殺されてせいせいした」 なんて話が多い最中。

「私、知ってますよ。その人たちの事」

 そう、声をかけてきた青年がいた。
 歳は彼と同年代か、少し若いかもしれない。

 美しい金色の巻き毛と、柔らかな笑顔が特徴的だった。
 美貌の青年といってもいいだろう。
 だがその美貌、白い肌に金色の髪と、少しくすんだような翠の目は血族の末裔を思わせた。

「歩きながら話しましょうか」

 彼は医療教会の意匠をあしらった、灰色の装束を着ていた。
 あまり見おぼえのない装束だが、医療教会の意匠があしらわれているのならやはり医療教会の狩人だろうか。

「宿へ帰る途中なんですよ……付き合ってくれますよね」

 青年はそう語ると、夜道を歩き出した。

「野良犬の事も調べているそうですね。あれはろくでもない犬でして……子供の指を噛み千切った事もあるのに、誰も駆除しようとしませんでした。ヤーナムは野良犬が多いですし、あれは逃げるのが速かった。罠をでもかけないと、捕獲も出来ないでしょうね。よくにた粗暴な犬もいたので、余計に区別がつかない……まったく、この街は野良犬が多すぎです。病だって蔓延する」

 青年はぽつぽつ、そんな事を語る。
 彼は黙ってそれを聞いていた。

「……あの娼婦は、美貌の娼婦でしたがひどくヒステリーだったそうですね。自分の美貌ですり寄って、それがうまくいかないと蛮行で解決しようとした。頬を引っぱたくなんて日常茶飯事、引っ掻く、暴れる、噛みつくなんてまるで犬か猫のような真似までしたと聞いてます。いやはや、血族の末裔といいますが……血族とはやはり、善きものになりえませんね。この街は末裔にも寛容ですが……私は、必用なら末裔でも血族であれば、浄化すべきだと……そう思う時もありますよ」

 美貌の青年はそう語り笑う。
 彼は、それならこの青年も「浄化」されるのだろうかと思っていた。
 道は宿から離れ、聖堂街へと向かう。

「酒場の男は粗暴で……いや、狩人の宿にいる連中は概ね粗暴なんですが、あいつは弱いと思った相手に虚勢をはるような男でした。それでよく、ひ弱な狩人に喧嘩をうって骨を折ったり……多分殺しているのも少なくないと思いますよ、まぁ……狩人では珍しくないというのが、現状ですけれども」

 青年はやけに流暢に、彼の調べていた存在について語る。
 気付いた時、開けた場所へと来ていた。

「でも別に私は、そういう事はどうでもよかったんです。獣が荒れていようが、娼婦のヒステリーがどうだろうが、ゴロツキ同然の狩人が虚勢をはろうが。ただあいつらは、してはいけない事をした」

 青年は笑顔だった。
 その笑顔は、青ざめた月の下いっそう美しく輝き、彼の視線を釘付けにする。

 ……カリスマとでもいうのだろうか。
 青年の美貌と、落ち着いた声の中に住み潜む「何か」は、確実に彼の心に浸透し……気付いた時には身動きがとれない程の距離がつめられていたのだ。

 逃げられないと悟った時、青年の表情が崩れた。

「あいつらは、ヤマムラさんを傷つけた」

 青年は、そういった。

「あの犬はヤマムラさんの手に噛みついた! あの売女はヤマムラさんの手を引っ掻いた! あのゴロツキは、喧嘩をとめに入ったヤマムラさんの頬を殴った! ……わかりますか? それがどういう意味だか」

 彼はごくりと唾を飲み込む。
 青年はいたって正常なように、当たり前のように、告げた。

「ヤマムラさんを傷つけていいのは、私だけなんです。それを、あいつらは打ち破った……何を許す必用があると思いますか? ねぇ。私のなんですよ、ヤマムラさんは。私だけのもの。私だけが愛していい。私だけが傷つけていい。私だけが苦しませていい。そういう存在を、勝手に傷つけた、怪我をさせたんです……許せませんよね? 私のものなんですよ、ねぇ? ねぇ?」

 青年は早口でそうまくし立てる。
 これは「犯行声明」だ。罪人の告白だ。殺したのはこの青年だ。
 頭でそう理解するが、すでに逃げる事は出来ない。追い詰められ、じりじりと後ずさりするしかなかった。

「なんで、そんな事を、俺に……」

 彼は辛うじて言葉を絞り出す。
 その言葉に、青年はふっと優しい顔を見せた。

「なんで、ですか。それは、そうですね……」

 あなたは、知りすぎたからですよ。
 青年の唇が優しく動くと同時に、彼の身体はとん、と後ろへ突き飛ばされる。

 ここはヤーナムでも一等に景色のいい丘の上だが、随分前から柵は壊れていた。

「あ……」

 手を伸ばす彼に、青年は最後まで笑顔でいた。
 とても安らかで優しい……天使のような、笑顔だった。

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 アルフレートは部屋に戻ると、すぐに声をあげた。

「ヤマムラさん、怪我は大丈夫ですか?」

 それまでぼんやり窓から月を見ていたヤマムラは、その声でアルフレートの方を向く。

「ん、あぁ。おかげさまで……すぐにでも狩りに出られそうだ」

 そしてそう言いながら包帯を巻いた右手を見せる。
 アルフレートは彼の隣に座ると、その包帯を解き様子を見た。
 腫れはおさまっているが、まだ熱を持っている。

「無茶したらダメですよ、ヤマムラさんを傷つけていいのは私だけなんですから」

 アルフレートはそう言い、丁重に軟膏を塗るとまた包帯を巻き直す。
 ヤマムラは明日にでもといったが、治るのにはもう数日必用そうに思えた。

 全てはつい先日のこと。
 酒場でいかにも新米といった風情の狩人に絡んでいた男を止めようとした時、突然殴りかかられ負った怪我だ。
 その時はすぐヤマムラも反撃をし、アルフレートが出る事もなくあの男は撤退していった。

 喧嘩なんてするもんじゃないが、余計な争いは避けたいとヤマムラは言っていたが……。
 その狩人がすでに「死んでいる」事を、きっと彼は知らないだろう。

 あの狩人だけじゃない。
 ヤマムラに対して無礼な発言をした挙げ句、蛮行に及んだあの売女も。
 ヤマムラに噛みついたあの犬も、全部もうこの世にいない。

 ヤマムラを傷つけていいのは自分だけ。
 アルフレートだけ、その禁忌を破ったのだから当然だ。

「ヤマムラさん」

 アルフレートはヤマムラの首に手をまわすと、優しく口づけをし、舌を入れ……。
 促されるように舌をいれてきたヤマムラの舌を、強く噛む。

「っん……」

 ヤマムラは驚いたように唇を離せば、血と唾液の混じった液体が糸をひく。
 アルフレートはそれを手で拭うと。

「ヤマムラさん、貴方は私のもの……私だけが傷つけていい、私だけの人……」

 そう語り、陶酔するように笑う。
 その笑顔に触れ、ヤマムラもまた微笑むのだ。

「わかってる……アルフレート。俺は君だけのもの……君だけの供物。君だけが愛していい、君だけが傷つけてもいい存在だ……」

 自分たちの愛情が歪なのはわかっていた。
 狂っているのも。
 だがそれでも二人は、もう離れる事ができないでいた。

 心の奥底、根にあたる部分が絡まるように結びつき、互いを縛めてしまったからだ。

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 後日、高台から落ちた自警団の話をヤマムラは聞いた。
 事故か事件かはわからないと聞く。
 ヤーナムの自警団はまともな人間がいない、きっとこれが事件なのか事故なのか暴かれないまま終るのだろうと漠然と思うなか。

「ヤマムラさん、行きましょう」

 アルフレートは笑顔で手をふる。
 ヤマムラは 「あぁ」 と一つ返事をすると、その場を後にした。
posted by 東吾 at 11:28| ブラボ