2019年02月12日

その影こそ本当は守るべきだった。(ウェカマジェ)

おい、東吾がウェカマジェかいてるぜ……。
……ホントだどういう事だよ……何があった……?

ってくらい、自分でも驚くほど久しぶりにウェカマジェBLをかきました。
明らかな事後!
って話……だけどこう、こう、ね?(ろくろを回すポーズ)

贖罪の気持ちを引きずりながら、逆にどんどん闇に取り込まれていくようなウェカピポさんの話です。

幸せにしたいのに……気が付いたら不幸にしてるんだ……。(?)
「這いずる罪」

 夜中に目覚めれば、隣ではまだマジェント・マジェントが寝息を立てていた。
 このクズは酷く淫乱で、誘えば金を払わずともその身体を抱かせる。

 元々男に抱かれる事になれているのか、マジェントはいつでも従順だ。
 黙れと言えば黙り、乱暴に扱っても文句すら言わない。

 それは常に従順でいなければ見捨てられる、というような恐れに近い感情を抱いているように見えて、一層ウェカピポを苛立たせた。

 何だって、このような下賤の男が自分の妹と同じような感情をもっているのだ。
 何だって……。

 すでに夜半過ぎだった。
 僅かに窓を開け外を見ても、灯りの一つすら見られず街中が夜の静寂に満ちている。

 ……男を抱くのは何時ぶりだろう。
 祖国では……若気の至りで幾度かそのような事をした。
 だが王の護衛となってからは身なりを正すようになり、礼儀を重んじて、素行の乱れも一切許さず自らを律してきた。

 しかしそれも今となれば徒労だ。
 祖国を追われ、ただ一人の肉親であった妹すら失った今、何を希望に生きていけばいいのだろう。
 そもそもその妹が死んだ原因でもある自分が今もこうしてのうのうと生きている事そのものが、度し難い。

 もし同じ立場の人間を見たら、きっとウェカピポはこういうだろう。

『何故、命をかけて妹を守らなかったのだ』 と。
『何故肉親が死んだのに、おまえだけがおめおめと生き残っているのだ』 と。

 酒を飲むようになったのも、男を抱く悪い癖がまた蘇ってしまったのも、どこか自棄になっているからだとウェカピポは思っていた。
 いや、自棄になっているというより、誰かに罰して欲しかったのだろう。
 王の護衛として、エリートとして、自らを律し高潔に生きてきた。
 だが過ちにより妹を死に追い遣ってしまった……このどうしようもない罪悪感を引きずりながら生きるには、彼のプライドは高すぎたのだ。

 安い酒を飲み、下らない相手を抱いて身体を汚して。
 死んだ時に誰から見ても 「あぁ、クズが一人のたれ死んだ」 と思われる方がよっぽどいい。

 そう思っているのに、まだどこか落ちきれない。
 いくら太陽を乞うても、二度と光を浴びて生きる事など許されないというのに……。

 ウェカピポはため息を一つつくと、紙煙草をくわえて火を付けた。
 紫煙を燻らせその火を見つめれば、僅かだがその苛立ちが落ち着くような気がする。

 まるで、すっかり屑の生き様じゃないか。
 ウェカピポは煙を吐き出し自嘲した。

「ん……ウェカピポ、起きてたのか……」

 シーツの中からマジェントの寝ぼけた声が聞こえる。
 暗闇の中でもマジェントのやけに白い肌はぼんやりと浮き出るように見えた。

「あぁ、起こしたか?」
「煙草の匂いがしたからさ……あんた、煙草なんか吸うんだ」

 マジェントは一つ欠伸をするとウェカピポの傍らへと歩いてくる。
 素足のまま歩く足音が静寂のなかに響いた。

「何だ、お前も吸うのか」  

 マジェントは卑しい身分の出身だ。ウェカピポからすると「庶民」の出身ともいえる。
 当然煙草や酒など好んでたしなんでいるものだと思っていたのだが。

「いや、俺は吸わないぜ? ……ガキの頃からノドが弱くてなァ。全然治らないんだ。だから煙草は吸わねぇ……って、言ってなかったか?」

 それは、ウェカピポにとっては意外な返答だった。
 いかにも身体は弱そうに見えたが、物怖じしない性格から病弱というイメージをまったくもっていなかったからだ。

「そうか……消すか?」

 そういわれ、マジェントは首をふる。

「俺は吸わないけどオヤジは吸ってたから気にならねぇんだよ、他人が吸うのはさ。傍にはよれないけど……煙草を吸うアンタの横顔を見るのも、嫌いじゃないし」

 そうしてマジェントは彼の傍らにある椅子にこしかけて、誰に聞かせる訳でもなく呟いていた。

「……煙草吸うの嫌がるとオヤジがわざと煙をこっちに吐き出したりして、かえって苦しい思いをしたからそういう素振りを見せない癖、ついてんのかもなァ。ははッ、言う事きかなきゃストレスの吐け口みたいにして殴る、蹴るの暴力三昧。ガキの頃の俺はベッドで殆ど寝ていたモンだから、労働力にもならねぇとブチブチ文句ばかり言われて……」

 弱いものとしてただ、暴力の吐け口にされる。
 相手はただ虐待したいという理由だけでマジェントを傍においていたのだろう。

 一度はウェカピポの義弟となった男が、婚姻関係を無効にされた事を怒ったのは単純に名誉を傷つけられたからというだけではない。
 自由に暴力を与えられる相手を奪われるのがイヤだった、というのもあっただろう。

 赤の他人である。
 だが弱い立場であった、という点でマジェントとウェカピポの妹は似た所があった。

 ……そしてそれを、ウェカピポは今、食い物にしている。
 マジェントに暴力こそ加えていないが、自分のやり場のない感情の吐け口として扱っているという意味では一緒だろう。

 妹を死なせてのうのうと生き延びて、誰かに罰して欲しいと願うがその内実はどうだ。
 妹のように弱い人間を食い物にして汚れたつもりになって、ただ自分のエゴで生きているだけじゃないか。

 自分が嫌った屑と同じような屑ではないか……。

 ウェカピポは灰皿に紙煙草を押しつける。
 煙がひとすじ立ち上り、闇の中へと溶けて消えた。

「ウェカピポ」

 マジェントに呼ばれ振り返れば、その唇が重なる。
 それはほんの一瞬のキスだったが、マジェントは幸せそうに微笑むと。

「俺は、煙草は吸えないけど煙草を吸った後のキスは好きなんだ。口の中、あんたと同じ味がするんだろうって思うとさ……何だろう、何か嬉しいんだよな」

 そういってベッドに戻った。
 そうして毛布をかぶると、その中で「これは大きな独り言だけど」と前置きし、こんな風に告げるのだ。

「俺はさ、言われればアンタにケツを貸すのもその逆も問題ねぇ……あんたはいい身体だしいい男だ。金もらわなくても……してやってもいいって、思ってる。けどよォ……あんたがそれ、辛いなら無理しなくてもいいんだぜ……あんたは、別にこういうのが好きな奴じゃないだろ」

 思いがけぬ言葉に、ウェカピポは言葉を失う。
 見下していた相手に見透かされていた事が意外だったのだ。

「あぁ……そう、そうだな……」

 ウェカピポは生返事でこたえるうちに、マジェントは再び寝息をたてる。
 その心が酷く動揺していたのは、見下した相手が思った以上に自分を分かっていたからだろうか。

 いや、きっと違うだろう。
 この場において未だ誰かを見下していなければいけない、そんなプライドをもっていなければ生きていけない自分に気付かされてしまったからだ。

「だが、それでも……」

 汚い自分でありたい。誠実ではなく不誠実で、屑の命を省みず、ただ裏の人間として汚く、汚く。
 そうする事だけが、今のウェカピポにとって唯一できる妹への贖罪だった気がした。
posted by 東吾 at 03:33| ジョジョ駄文