2018年07月29日

嫉妬するほど息の合った長ムラとアルフレートくん。

連盟の長、ヴァルトールに助太刀するヤマムラ=サンがあまりに息ピッタリで「私よりお似合いじゃないですかーもー」って嫉妬しちゃってちょっとスネちゃうアルフレートくんが、一人悶々と考えてしまうようなヤマアルBLです。

今回は特にキスやらセクロスはしないけど、ヤマアルBLだよ。
そうだねヤマアルだね。
あれこれ悩んでいるアルフレートの話だけど、多分ヤマムラも一人になってアレコレ考えて悩んでたりするとはおもいます。

だってヤマアルだからね。
「嫉妬するほどの呼吸を前に」

 その日、私はヤマムラさんと別の部屋をとる事にした。

「どうしたんだ? 一緒の部屋じゃなくてもいいのか」

 ヤマムラさんが普段泊まっている部屋は殆どもう常駐宿で、月にかかる素泊まりの値段を一気に支払っており、もし戻ってこなければ中の道具は勝手に処分していいという契約をしているらしい。

 部屋は広くベッドも大きめだったから、私は自然と同じ部屋に転がり込むようになって……。
 あの部屋には私の私物も沢山置いてあるから、風邪でもひいてなければ別々の部屋をとる事なんてないのが普通だったのですが。

「……すいません、今日はちょっと考えたい事があるんで」

 私は曖昧に言葉を濁して部屋に入ると、すぐに鍵をしめてベッドへ倒れ込んだ。

 ……ヤマムラさんには愛されている。
 その自覚もあったし、自信もあった。

 勿論、ヤマムラさんの人生全てを把握しているワケではないし、私がヤマムラさんと過ごしている時間は彼の一生の中からすると、ほんの短い時間だろう。

 それでも私は一生を賭してあの人を愛してるし、ヤマムラさんも同じように私を見てくれている。
 そう、思っていたから……。


『……長、助太刀します!』

 探索の最中、巨大な蛇に立ち向かうヴァルトールさんを……連盟の長を見つけたヤマムラさんが突如走り出し千景を抜いた時は、ただ「仲間を守る為なんだ」としか思わなかった。
 ヤマムラさんが助力をするなら自分もと愛用の石槌を握って二人の傍に駆け寄った時、それがとても私の入る隙などないほど美しい連携の上にあったのは、紛れもない事実だった。

 ヴァルトールさんの使う回転ノコギリの間合いを熟知しているヤマムラさんはその死角から相手の懐に入り込むと、巨大な獣がその首をもたげる前に切り落とす。
 蛇がヤマムラさんに向け毒を吐く素振りを見せれば、その首をヴァルトールさんの回転ノコギリが阻む。

 一分の隙も無い連携に、私のできる事といえば巻き込まれない事。
 ただ彼らの廻りにいる当たり障りのない蛇たちをつぶすくらいが関の山で、もしうかつに私がその中に飛び込んだら、二人の息も乱れぬ連携が途切れてかえって邪魔をしてしまうだろう。

 そう思えるほどに、二人の連携は美しかった。
 そう……私が、嫉妬してしまう程に。

 連盟の長、ヴァルトールさんとはヤーナムに来て比較的すぐに出会ったと、ヤマムラさんはいっていました。
 仇を求め彷徨い、その仇討ちを果たして抜け殻のようになりそうだったヤマムラさんに「次にすべき事」を伝え、道を与えてくれたという恩義もあると。
 だから今でも連盟に所属し、抜けるつもりはないと……。

 それは愛情ではなく、信頼なのはわかっていました。
 だけど……自分の心が納得してくれないのです。

 愛情じゃなくともわかりあえる時間を共有した二人、その圧倒的な信頼を見せつけられて、あぁ私はなんて短い時間でしかヤマムラさんと過ごしていないんだろうと。
 私の愛情は、二人の築いてきた信頼に至らないのではないかと……。

 ……そういう風に、嫉妬して……。
 我ながら無様で醜くワガママだという事はわかっています。
 急にヘソを曲げたように口をきかなくなってヤマムラさんを困らせてる私は、きっとかわいくない男だっていう事も。

 だけど、それでも……。

 悔しかったんです。時間による信頼にまだ至ってないような気がして。
 辛かったんです。自分より息の合った盟友に背中を預けるヤマムラさんの姿を見るのが。
 怖かったんです。もし私がいなくなったら、あの人は心変わりしてしまうんじゃないかって。

 私がいなくなったとしたら、その先の人生はヤマムラさんの自由なのに。
 私って図々しいんですよね。私がいなくなってもヤマムラさんはどこかで私を思ってくれている、そんな風に感じていたから……。

 ヴァルトールさんと戦い、お互い笑って別れる姿を見て、あぁ、この人ならヤマムラさんを幸せにできるんじゃないかな。
 私と違って、いずれくる別れなど感じさせず……。
 あるいは別れがくる前に、ヤマムラさんを伴ってどこかに旅に出るんじゃないか……。

 そんな事を考えて、勝手に嫉妬して、でもその嫉妬がとめられない。
 そんな姿を見せたくないから、部屋を別にとったのに……。

「アル、大丈夫か? アル」

 ノックの後、ヤマムラさんの声が聞こえる。

「珍しく部屋を別にとったから、心配になってな……具合でも悪いのか?」

 本当の気持ちなんて言えるワケがない。
 小さい奴だと思われるのも、重い男だと思われるのもいやだった。
 そうじゃなくても私は充分自分の思いが「重たい」部類の人間だと分かっているのだから、これ以上ヤマムラさんに負担をかけるワケにはいかない。

「何でも……ないです。すこし風邪気味で、ヤマムラさんにうつしちゃうといけないから……」

 この部屋に入る前から準備していた言い訳を告げれば、ヤマムラさんは心配したような声をかける。

「あぁ、やはりそうだったのか。今日は途中から、キミはずっと押し黙って俯いていただろう? 具合が悪いんじゃないかと思っていたんだ……実はさっき、栄養になりそうなものを市場に出て買ってきたんだ。……ドアノブに吊しておくから、具合がよくなったらとりにおいで。腐るモノはない……と思うから」

 そう告げて、ヤマムラさんは自分の部屋に戻る。
 ドアの向こうから完全に気配がなくなるのを待ってから、私は音をたてないようドアを開けた。
 ドアノブには紙袋がブラ下げてあり、慌ててそれを回収すれば今が食べ頃であろう桃が3つほど入っていた。

「これは、腐ってしまうものじゃないですか。もう、全くあの人は……」

 傷まないよう気をつけながら机の上に白桃を並べれば、その中に一通。一枚の紙が折られただけの手紙がそっと忍ばせてあった。

 ……何だろう。
 私の不機嫌の理由も見透かされて、子供っぽいとでも書かれているのだろうか。

 そんな恐れを抱きながら小さな手紙を開いてみれば。

『早く元気になってその、太陽みたいに笑うキミの顔を見せてくれ』

 拙い文字で、そう綴られていた。
 私はそれを見て、何でいちいち嫉妬なんかしていたのだろうと何だか恥ずかしくなってくる。

 ……確かに私は、ヴァルトールさんには及ばない。
 ヤマムラさんとヴァルトールさんには、お互いを理解し信頼するだけの時間があって、私にはまだそれだけの時間がないのだから。

 だけどヤマムラさんは、私を求めてくれているのだ。
 私の笑顔を、私の愛を。
 私もそう、ただ笑っているあの人の隣にいたくて……ヤマムラさんもきっとそうなのだ。ただ私を笑顔にしたいだけ、笑顔の私と並んでいたいだけ……。

 それなのに、何てつまらない嫉妬でヘソを曲げているのだろう、私は。
 ……いいじゃないか、ヤマムラさんには信頼できる仲間がいても。求めてくれるのが、私の笑顔であるのならそんなに幸せな事はない。

 私はベッドに横になると、静かに目を閉じ考えた。

 ……明日はヤマムラさんに何を話そう。
 もし、素直に「嫉妬していた」事を告げたら、ヤマムラさんは困るだろうか。それとも困りながらもそんな私も、受け入れてくれるだろうか。
 いや、余計な事はしないで二人、もらったこの桃を食べよう。
 今の時期ならきっと甘くて美味しいから、一人で食べるのはもったい無い。

 二人でしたい事を考えているうちに、私は夢に沈んでいった。
 その日見た夢は覚えてないが……きっと幸せな夢だったのだろう。
posted by 東吾 at 22:41| ブラボ