2018年07月23日

熱中症には気をつけてね! なヤマアル。

今年の夏はやけに暑い、というか籠もるように暑いネ!
みんな熱中症には気をつけよう!

というワケで、熱中症でブッ倒れてしまったアルフレートくんを介抱するヤマムラの、ヤマアルBLを書きましたゾイ。

まだ付き合う前の二人みたいな空気を醸し出している奴です。
どんどん脳髄にヤマアルを浸透させていこうな!
「熱に浮かされて」

 やけに熱っぽい身体を動かそうと思えば、鈍い痛みが身体全体を留める。
 頭がぼぅっとして視界がかすみ、どうにも考える事がまとまらない。
 そんなアルフレートの様子に気付いたのか。隣にあった人影は。

「やぁ、やっと気が付いたのかアルフレート」

 そうやって、安心したように笑った。
 見ればヤマムラが心配そうにこちらをのぞき込む姿が見える。
 そして彼は冷たい手ぬぐいをアルフレートの額に乗せ替えた。

 頭がぼんやりしてあまり考えられないが、首や額が妙に冷たくて気持ちいい。
 濡れたタオルを当ててくれているのだろう。
 ……熱でも出てしまったのだろうか。

 確かに最近は血族の噂を聞くので夜遅くまで活動している事が多かった。
 食事もおろそかになっていただろう。
 だが、朝は風邪をひいてるようなだるさはなかったのだが……。

 ぼんやりとした頭で考えるアルフレートの隣でヤマムラは新しいぬれタオルをこしらえると、そのタオルをアルフレートの首の下にあてた。

「処刑隊の狩装束ってのは、殆ど空気を通さないんだね……熱中症だと思うよ」
「ねっ……ちゅうしょう……?」
「俺の故郷の夏は暑くてひどく蒸すから、夏になって外にいるとキミみたいに急に倒れる人がいるんだ……熱中症でね。そう、日光にあたって身体が熱くなってきて、意識がなくなるような症状が出るんだよ」
「そうなんですか……」

 まだどこか思考に霞がかったような気持ちでいるまま、アルフレートは曖昧に返事をする。
 そんなアルフレートにヤマムラは水筒を手渡す。

「近くに清水が湧き出していたからくんできた……冷たい水だ。意識があるならすこし飲んでおけ」

 差し出された水筒を受け取ろうと手を伸ばすが、身体は思うように動かない。
 アルフレートが起き上がれない事に気付いたのか、ヤマムラは黙って背中に手をまわすと彼を支えるように抱き起こし、水筒に入った水を飲ませた。
 冷たい清水が喉を潤す。

「ありがとう、ございます……」

 そう呟こうとした時、アルフレートは自分の身体が殆ど裸同然なのに気付いた。

「あ……あっ、あっ……」

 何だかそれが無性に恥ずかしくなり、アルフレートはシーツにくるまる。
 その姿を見て、ヤマムラはすこし困ったような顔をして壁を指さした。

「すまない、すこしでも涼しい格好にして熱を逃がそうと思ってな……処刑隊の服はかなり厚手で風通しも悪いだろう? 勝手に脱がしたが……不躾だったようだな」

 ヤマムラが指さした壁には、処刑隊の狩装束が釣る下げてある。
 殆ど意識のないアルフレートの様子を見て、きっと慌てて服を脱がせたのだろう。つまり、無防備な裸を見られた事になる。

「す、すいません……お手数かけて……」

 そう言ってる間にも、アルフレートは自分の耳がどんどん赤くなっていくのに気付いていた。
 裸を見られる事に疚しい事はないのだが、それでも好意を抱いている相手に意図せず見られたというのが何とも言えずに恥ずかしかったのだ。

 そう、アルフレートはヤマムラに少なからず好意を抱いていた。
 最初は「血族の武器を持つあやしい男」として調査していた相手だが、細身ながら獣たちを圧倒する技術や異郷からきた人間特有の慎ましやかさはアルフレートがこれまで出会ったどんな人間とも狩人とも違って見えて、えらく魅力的に思えていたからだ。

 だから今日の狩りは「ヤマムラと同行できる」と思い、暫く無理をしていたのは承知だったが強硬してついてきたのだ。
 それがこのような結果になってしまうとは……。

「……勝手に脱がせたのは悪かったよ。ただ、キミの意識が朦朧としているようで、これはマズいと思ってとっさの判断だった……男同士だから気にしないなんて勝手に思っていたが、キミはまだ若いもんな。配慮不足、悪かった」
「いえ、謝らないでください。こっちは命を助けてもらったんですから……」

 そう言ってる間にも、頭がふらふらしてくる。
 これはヤマムラに裸を見られた羞恥もあったが、頭がすっかり沸騰して暑くなったせいの方が大きかっただろう。
 耐えきれず横になれば、ヤマムラはまた新しく冷たいタオルを絞って額と首の下とに入れてくれた。

「ありがとうございます……」
「いや、気にするな。……ただ、具合が悪い時にあまり無理をするのはいけないな……キミはいつもこう、無理をする口なのかい?」
「いえ……そうではないんですけど……」

 まさか「貴方と一緒にいたいから無理をした」とは言えまい。
 アルフレートの恋心はあくまで秘めたモノであり、彼が受け入れてくれるとも限らない……いや、受け入れてくれる可能性はずっと低いものなのだから。

「その口ぶり、いかにも無理しているって感じだな……熱中症は、休養不足や栄養の偏りからも来るんだぞ? 俺もお世辞にもきちんと栄養をとってる方じゃないが……ちゃんと寝てるのか? ……心配だな。暫く俺がついていてやったほうがいいか?」

 額のタオルに触れながら、ヤマムラは心配そうに問いかける。
 ただ単純に、若いアルフレートが無鉄砲な生活をしてないか心配だっただけだろう。だが半ば熱に浮かされていたアルフレートの口からは、自分でも思いも寄らぬ言葉を口走っていた。

「それって、責任とってくれるって事ですか? ヤマムラさん」
「……責任?」
「だから、私の裸を見た……」

 そこまで言ってアルフレートは、自分がとんでもなく妙な事を口走っている事に気付いた。相手はただ自分が無茶しないか心配しているだけというのに、「責任」とは何事だ。
 しかもこっちはただ裸を見られただけ……緊急事態で仕方ない、事故のようなモノであり、ヤマムラは命の恩人のようなものだ。
 それなのに責任だなんて……。

 案の定、ヤマムラは呆れたようにため息をつくと、優しくアルフレートの肩を叩いて笑った。

「どうもキミは暑さのせいでまだ冷静じゃないみたいだね……」

 やっぱり、暑さの戯れ言ととられたようだ。
 いや、それでいいだろう。
 下手に本気にとられてしまったらそれはかえってカッコ悪い。

「う、うぅ……私、暑さでちょっとおかしくなっちゃったみたいです……」

 アルフレートは恥ずかしそうにシーツの中に潜り込むと、赤くなった顔を悟られまいとする。
 そんな彼の頭を撫でると、ヤマムラはその耳元でそっと囁いた。

「……もしキミが熱に浮かされず、元気になってもそんな思いを抱いてたのなら……改めて言葉にしてくれないか? ……その時はきちんと返事をしよう」
「へ? あっ……えぇっ……?」

 驚いてシーツから顔を出すアルフレートの前には、優しく微笑むヤマムラがいた。

「……心配しなくても、キミを傷つけるような返事はしないから」

 そうしてヤマムラは一口、水筒の水を口に含むと口移しでそれをアルフレートに与える。
 すこし温い水だったが、それはやけに心地よくアルフレートの喉を滑り……。

「ヤマムラさん……」

 そのままアルフレートは、気を失うように眠りの世界へ誘われていった。

 あぁ、これはどこまで自分が見た夢で、どこまでが現実だったのだろう。
 強い日差しから隠れた小屋で、そんな事を考える。

 夢なのか、現実なのか酷く曖昧な頭のまま、アルフレートは静かに呟いた。

「約束ですよ……元気になったら……必ず言いますから……」

 その指先にヤマムラは触れる。
 もうすぐ夕方になれば、彼を背負って街に戻れるだろう。

 その時全て夢だと思って忘れてしまうかもしれないが……。
 それでも今この瞬間、二人は心地よい思いに包まれていた。

posted by 東吾 at 09:18| ブラボ