2019年09月14日

嘘つきアルは情緒不安定。(ヤマアル)

やや情緒不安定というか精神が錯乱気味というか、ややメンタルがイってしまっている系のアルフレートくんが、過去の自分の話を模造しすぎて「昔話が嘘ばっかり」になってしまうけど、それを信じているふりをして今日もアルフレートくんをよしよしするヤマムラさん。

そんなヤマアルの話です。
アルフレートくんが情緒不安定すぎて、語る過去が毎回変わるメンタルがイってしまった人になっているのは、ぼくのフェチズムです。

自分が誰だかわからないフレートくんはフェチい……。
という訳で今日もぼくのフェチズムがいっぱい詰まった飯を食って下さい。(な?)
「虚飾の中にある言葉にならないもの」

 アルフレートは時々、酷く深酒をする事があった。
 彼は飲み過ぎると記憶が酷く曖昧になるようだが、同時に酷く饒舌になる。
 話の大半は、他愛もない事なのだが、時々彼は「昔の事」を話す事がある。

「私の母は、貴族の末裔という事だけが自分の存在意義であるような、それを鼻にかけた高慢な女でした……」

 最初、ヤマムラもその話を真摯に聞いていた。
 人間は、酔った時に本性が出るというがその内実は本性が出るというより「抑えていた自我が顔を出す」という方が正しいだろう。

 真面目で品行方正で礼儀正しい青年。
 いかなる狂騒の中でも常に正しくあろうと強く自制しているアルフレートの本音に近い姿が見られるというのは、自分だけしか知らない秘密があるようで密かに喜ばしかったというのもある。

 だが、二度目の過去の話でヤマムラははっきりとアルフレートが「おかしい」事に気付いた。

「私の父は酷い暴力を振う男でした……家が貧しいのもあり、小さいうちから私を無理矢理に働かせて、病弱の母は早くに亡くなって……」

 以前は貴族の末裔の母が、今回は病弱の母になっていたからだ。
 それからも時々アルフレートは自分の昔話をするのだが、ある時は街娼の息子として幼い頃から客を取った過去を穢れていると嘆き、ある時は処刑隊だった父に憧れ、自分もあぁなるのだと両親を誇りに思っていると語り、時には孤児として育っていたといったはずなのに、その後に両親から暴力を受けた話をする事すらあった。

 そう、アルフレートの「昔話」は無数に存在するのだ。
 それは自分の過去を織り交ぜた作り話なのかもしれないし、誰かから聞いた話を脚色したものなのかもしれない。
 ただはっきりと言えるのは、「嘘である」ということ。
 アルフレートの語る過去は虚飾に彩られ、決して彼自身の真実ではないという事だけだった。

 どうしてアルフレートがそのような嘘をつく癖があるのかはわからない。
 隠したい過去があるからか、誰かを利用するために同情を買うような語りをしていたからか、人肌を求め一夜の相手を探す時に、仮初めの身分を語っていたのかもしれない。

 だが全て、今のヤマムラにはどうでもよかった。

「そうか、辛かったのか? ……今でも哀しいと、思う事があるのか? 俺に、出来る事があったら言ってくれ」

 すっかり酔ったアルフレートは赤い顔のままヤマムラの身体にしなだれかかると、耳元でそっと囁く。

 あなたが、ほしい。
 あなたに見てほしい。あなたに抱いてほしい。あなたの声が、言葉が欲しい。ただ、あなただけがほしい。

 過去が虚飾に包まれていても、その言葉は「真実」だろう。
 何故ならその言葉を告げるために、アルフレートは嘘を積み重ねたのだろうから。

「あぁ……好きにしてやる。君の好きなようにな……」

 そう囁いて、すっかり酩酊したアルフレートを支えるように立ち上がる。
 その瞬間、アルフレートは呟いた。

 アルフレートの昔話が、どこまでが真実でどこまでが嘘なのか。
 あるいは最初から本当の事なんて一欠片もないのか。
 もうヤマムラはそんな事どうでもよかった。

 過去の話を含めて全てがアルフレートであれば、それでいい。
 また、出来る事ならばボンヤリと、この矛盾した嘘で塗り固めた経歴に幾度も騙される駄目な男だと思ってくれているなら尚良い。
 そうして振る舞っていれば、こうしてアルフレートの言葉も虚飾も全てを独占できるのだから。

 ……狡い性格だと思う。
 だがそれでも「自分だけのアルフレートである」という、この瞬間がヤマムラにとっては大事だったから。

「さぁ、いこうアルフレート……愛しい俺の……」

 誰にも気付かれないよう口づけを交わして、アルフレートの肩を抱く。
 虚飾の中にある言葉にならない場所にこそ、ヤマムラの求めているものがいつでもあったのだ。
posted by 東吾 at 14:09| ブラボ